魔王城 - ヒイラギゲームコーナーのポスターの裏

121話『マカイゲートの奥の手』


「イーグルタイガーが、消えた……?」

目の前の光景に困惑する優也達。

マカイゲートに放った一撃を食い止められてから、
優也達とイーグルタイガーとの闘いは始まった。

……しかし、しばらくするとワープホールが現れて
イーグルタイガーがそれに飲み込まれてしまったのだ。

更に周りを見てみると幾つかワープホールが発生しており、
て周りのモンスターを片っ端から吸い込んでいる。

「……っ!!楓たちが、危ない!!」

ワープホールのことを知っていた優也はすぐに、
イーグルタイガーや周りのモンスター達がどうなったのかを察知できた。

「お、おい。落ち着け優也!!あそこにはオルスが残っただろ?
それにあいつら二人も戦える奴らだろうが!」

「ちがう、違うんだよ…!もしかしたら楓は、イーグルタイガーの事がまだっ…!」

「なにっ?」

優也はイーグルタイガーと戦った時のことを語った。

「殺されかけてトラウマになっただぁ?
んじゃなんで戦えてんだあいつ…」

「その後、魔物と戦ってるうちに克服したんだ。
でも…イーグルタイガーを前にしたら、流石に冷静で居られないと俺は思う…
彼女の奴に対する怯えは、今まで見たことない程だったから…」

「…ハン。自分の女が心配だから、戻る。つまりそう言いてえんだなお前は」

「そ、そんな訳じゃ!……いや…その通りだよ…ごめん。」

「仲間の言葉を信じろよ!!
いいか、あいつらはゲートを倒す事をオレ達に託してあそこに残ったんだ。
今引き返して何になる?はっきり言ってやる。テメェの力がねえと、
アイツは倒せねえ。だから、あいつらを信じて今は目の前の敵に集中しやがれってんだ」

「……レオン……」

「分かったら、無駄に心配する時間は終わりだ。行くぞ、優也!!」

「うん……わかったよ!覚悟決める!!」


122話『限界』



「はぁ…ぐあぁっ!!」

「優也ッ!?」

優也の元へ駆け寄るレオン。

「おいっ!!しっかりしやがれ!!おい!!」

「う…うぐっ……うしろ…」

「チッ、介抱してやれる時間もくれねえな!!」

レオンは優也を抱えて敵の攻撃を避けた。

「くそっ…今のでお前、限界だろ。休んでやがれ」

少し離れた木陰に優也を捨て置くと、レオンは再び戦場へ戻る。

「れ…レオンさん!!限界ですっ!

123話『追い詰められたレオン』


(もう……倒れちまってもいいよな。オレ達ぁよくやったよ。
数人で、何十何百という魔物を相手に、何時間も……。


「へへ……」

倒れかかったレオンの頭に、
走馬灯のように彼女との最後のやり取りが浮かんだ。

『絶対、無事に帰ってきてね』

『たりめーだろ、俺が死んだら村が滅ぶ』

ハッ、とした顔でレオンは目を見開き、持ち堪える。

「違うッッ!!!!
ここで……ここでオレが倒れたら、誰が守んだよ。
大事な家族…!愛した女…!!
……あんな場所でも、生まれ育った故郷をよ!!」

「れ…レオン……」

立ち上がる、レオン。

「ハァ…ハァ…ちくしょうっ……ちくしょう……!!」

立ちあがろうという思いは強い。だが身体が追いつかない。
諦めきれない悔しさでレオンは歯を噛み締め顔を顰める。
そうするうちに、次の敵の攻撃が彼に飛んで……

「…あ?衝撃が来ねえ。なんでだ……」

「……凍らせたよ。」

そこに立っていたのは、すでに限界を迎えていたはずの仲間だった。

124話『紅い目をしていた』


魔物の攻撃を防いだ優也。
魔力はとっくに底を尽きたはずだが、
盾から冷気を帯びた結界を生み出して全てを防いでいる。

「……優也。オメェ……」

優也はゆっくりと目を開いて、レオンと、そして片手へ持つ得物に礼を述べた。

「……ありがとう、レオン。そして…イノーマス。」

「イノーマスだぁ?って……」

「この剣の名前だよ。あともう一歩、どうしても力が欲しいって時に
こいつは力をくれるんだ。」

「バッカ、そんなことよりお前、その目どうした!?」

「……へ、目?」



125話『拒絶の氷界』

126話『誰も知り得ぬ進化』

127話『決戦、魔人ゲート』

128話『』

127話『帰り際の犠牲者』

128話『違反5つ』

129話『いつか帰ってきてください』

130話『四人目の仲間』

131話『乱暴者からの謝罪』

132話『旅立ち前の祝賀会』

133話『かけだし冒険者と獣のオキテ』

134話『』



「あの時だよ、レオの誕生日、モンスターの群れを倒した帰りだ。
…お前達こそこそ話ししてたよな?」

「…えっ、もしかして…聞こえてた?」

「あのな。獣人の耳を舐めてもらっちゃ困るぞ。
お前ら人間の、何倍も小さな音を聞き取れんだからな。
んで?魔王軍ってお前ら一体何を知ってんだよ、
気になってたんだ、聞かせてくれてもいいだろ?」

「……分かった。レオンには、話しておくよ」

優也達は自分らの置かれた状況を、レオンに説明する。

「…んな馬鹿な事あんのか…?」

「あったのよ!!でもなきゃ、私達今頃平和に暮らしてるわ」

「…まー仕方ねえ、聞いたのはこっちだからな、信じてやるよ。
んで?お前ら、その魔王ってのは倒せそうなのか?」

「……少し前なんだけど、まだ翠もいなかったし装備もこんなに整ってなかった時。
魔王軍の八大幹部ってのと闘ったんだ。…手も足も出なかったよ」

「あれからだいぶ強くなったし、翠も仲間になったけど…
今戦ってもそいつに勝てるかどうかすら怪しいわね」

「あちゃー、それじゃ魔王なんてのは夢のまた夢だな」

「ええ、だから私達はもっともっと、戦って強くならなくちゃいけないわ。
優也のイノーマスだって死戦を掻い潜って成長したんだから。」

「成長、か…。広い世界を自由気ままにさすらい、
己を高めて世界に名を馳せる旅。そんなもん、オレもやってみてえなぁ」

「そんな遊びっぽい感じじゃ無いわよ。私達は故郷を救うためにやってるんだから!」

「故郷ねぇ…その気持ち、オレにはあんまりピンとこねえ話だな。
…何しろここ、掟がくっそ厳しくて窮屈だからな」

「嫌なら引っ越しちゃえばいいのに」

「そう簡単に行くもんでもねえんだよ。金はかかるし、
母ちゃんの祖母の祖母の時代からあの村に暮らしてるって言う話だし…
簡単には出らんねえのさ」

「レオンも…大変なだねえ」

「や、やめろ。そんな哀れまれるほどの話じゃねえ!!」



「親父が死んでから、俺は母ちゃんに負担かけねえように
弟たちの面倒を見てんだ。
今俺が居なくなったらみんな飯が食えなくなる。」







「まだ……だ…!!」

「……ゆ、優也?何する気だお前…」

「俺はまだ、こいつの力を引き出せていない気がする…!
今こそ俺に…俺に手を貸してくれ!イノーマス!!」

優也の想い、みんなを守ると言う決意。
それが、彼の持つ聖剣に伝わった。

『ああ!!』

剣から短い声が聞こえた。その瞬間、眩い光が
剣の峰から、優也を包むように放たれる。

「ぐおっ!……なんだなんだ!?」

「……?身体が、軽い……」

「優也、おめえ…目が……」

「えっ?」

優也の瞳は紅く染まり、
イノーマスの放つ力を、その身に纏っていた。

「……とにかくまずは敵の軍勢を止める!!」

優也は剣を地面に刺す。
そしてそのまま魔力を込めて行った。

「アース・フローズン!!」

剣を刺した所から、急速に氷が広がっていく。
広がった氷に触れたモンスター達は、足を取られて動きが鈍った。
しかしなおも、動きは止まらないものもいる。

「まだだ!出力を上げる!!」

さらに魔力を込める優也。
氷は更に広がっていき、地面から足へ、
足からモンスターの身体へとカチカチに凍らせていく。

「す、すげえ魔法だ…ってかオレらもやられんじゃねえかこれ」

「制御も効くよ。味方のいる方に氷は伝わらない」

「き、器用なもんだな…」

しかし、空を飛ぶ鳥が何体かおり、優也に襲いかかる。

「…フロストブレード!!」

優也の、新しい剣の技。
氷結斬より、強力な冷気を帯びた斬撃が、
敵を斬り伏せる。その切り口から、
どんどんとその身が凍っていく。





「ウチの旦那はね……人間だったのさ」

「人間…それって…」

「アンタらとおんなじ種族って事さ。獣人でもなんでもないただの人間。
つまり、レオンや他の兄弟達は…人間と獣人のハーフなのさ」

「そ、そうだったんですか…」

「……実を言うと、旦那が死ぬまでレオン達にはずっとそれを黙ってたんだ。」

「な、なぜですか…?」

「まだ幼かったレオンは…獣人である自分を誇りに思ってた。
本当のことを言っても受け入れるにはまだ早いと思ったのさ」

「父親が殉職してしばらくした後、ある事が起きてレオンに本当の事を話した。
それを聞いたアイツは家を飛び出してね……」

そしてその事が周りのガキンチョ達にも広まっちまった。
それからはレオンのやつ、更に孤立しちまってさ。

……コチカも、ハーフであるレオンをいじめる奴らとは縁を切って、
今に至るってところさね。

「……それで、お友達を欲しがっていたんですか…」










「怪我をしているのか…!!」

「ああ、きっとモンスターに巻き込まれて、重傷を負ったんだ!!
息はあるが…危険な状態だぞ!!」

「楓…早く治療を!!」

「ご…ごめんなさい!今までの戦闘で私…魔力切れを起こしてて回復が使えないの!!」

楓は魔力切れで立ち続ける事も危うい状態だった。
回復役がもうこの場にいない以上、取れる選択は限られている。

「な、ならば他に、回復魔法を覚えてるやつはいないのか!?
…居ないならポーションでも良い!!持って無いのか!?」

静まる一同。しかし、ふとした所で楓はあるものを発見する。

「……!あ、あれ!!あんなところに、ポーションが落ちてるわ!!」

楓の指差す先、そこに確かにポーションが落ちていた。
見たところ、新品で使われていない。

「な、何故こんな所に新品のポーションが…」

「んな事どうでもいいっ!!早く使え!!」

サッとポーションを拾い、怪我人にかけようとするレオン。
しかし、それを止めたのはその場にいた冒険者の1人だった。

「まっ、待てよ!!
この負傷者は外部の人間だ!
外の人間を俺たちが勝手に治療すると…掟を破る事になる!!」

「なっ、なにっ…!?」

「それも、違反レベル4の重罪だ。…この中にいる連中はみんな
バカやって違反ランク1以上なんだ。誰が治療しても
必ず村から追放されてしまうぞ!!」

この場にいる誰もが、彼を治療をした瞬間に
追放され村には二度と戻れなくなる。
絶望的な状況に翠は膝をついて声を荒げた。

「そ、そんな。
なんで…なんでダメなんですかッ!?人の命が、かかっているんですよ!!」

「…もういいわよっ私が使う!!この村から追い出されても全然いいもの!!
助かる命を見捨てるなんて、私は出来ないッ!!」

そう言って楓はポーションを奪い取った。

「ちょっと待て!!」

更にそこからポーションを奪取するレオン。

「ちょっと、レオンの馬鹿!!止めないでよっ、今すぐ治療しなきゃ、この人ッ…!!」

「違う!!
…楓、お前の言う通りだぜ。
救える命は、全部救うのが正しい。それを縛る掟なんて…
…そんな掟がある集落、俺もクソ喰らえだ!!」

そう言いながらレオンはポーションを怪我人に投与した。

「…れ、レオン!それじゃアンタがこの集落から…」

「ははっ。…後先考えずにやっちまったぜ。母さん達に申し訳ねえや。
でも…みろよ、みるみるうちに傷が塞がってくぜ?
呼吸も穏やかになった。助けられて…ほんとによかったぜ」

「レオン……」

「ん?いいんだ気にすんな、追放なんて今更…」

「……バカ。」

「んなっ!?おい、なんでだよ!!
折角、違反を肩代わりしてやったってのに…」

思いもよらぬほどそっけない楓の反応に驚きながら怒るレオン。
そんな彼に楓は少しバツが悪そうに語る。

「いや…そんな事しなくても私…ていうか私たち、どっちみち今回の事が終わったら
すぐここを旅立つ予定だったから。別にこの村を追い出される事になっても
あんまり困らなかったって言うか…」

「そっ、それじゃあ…」

「…勢いで損したわね、レオン」

「そう言うことは早く言えよぉおおッッッ!!!!」

覚悟を決めてたレオンも、流石にこの仕打ちには肩をガックリと下ろした。



「賀王夜レオン、貴様は先日の行いにより、とうとう違反ランク5を
超えたようだな。よって掟に則り、直ちにヴィルデスを追放するものとする」

「あ、あのっ…なんとかならないんですか?レオンは人の命を救うために…」

「よせよ楓…。もういい、過ぎた事だ」

「いい訳ないでしょ!あんたの家族はどうなんのよ?あんたの稼ぎで何とか生計繋いでたんでしょ!!」

「そ…そりゃお前、アレだ!!外で俺が稼いで、そんで外から母ちゃんに仕送りすりゃいいんだよ!!」

「バカ言うんじゃないよ」

「……か、母ちゃん」

「いつまでもあんた一人に頼らなきゃいけないほどあんたにおんぶに抱っこなあたし達じゃあないよ」

「だけどよ!!俺の稼ぎが減ったら…
アイツらの欲しいもんとか、買う金も余裕が無くなってよ…」

「その心配は…
「レオンさん!!」

親子の会話に、割り込む男が一人。

「……誰だ、おめえ」

「申し遅れました。…私はONESのボス、の息子です。
あなた方に伝えたいことがあって参りました」

「私はあなたのお父上…賀王夜 嶺緒に命を救われたのです。
そんな命の恩人が、今まで村の掟で窮屈な暮らしを強いられ
今や追い出されそうになっている。その事実に私、耐えられないのです」



「まあ…うーん…そうだな、どうせこの村には居られねえんだ…結果オーライなんじゃねえか?
色々こんがらがって…俺も訳わかんねーや。
おめえらも元気でよ!俺は新天地でバリバリに冒険者として名を馳せるからよ!」

「……ちょいとお待ちレオン」

「あぁっ?んだよ母ちゃん。今、いい感じに別れる雰囲気だったのによ」

「アンタ本当はどうしたいんだい?」

「………は、はぁ?」

リアンナの問いにレオンはまた、言葉が詰まるのだった。

「アンタは迷ってんのさ。ほんとはこの三人と、冒険に出たい。
だけどアタシら


「…その心配はないよ。ほら、これが今ウチにあるお金さ」

リアンナはそう言い麻袋を取り出した。中を覗いてみるとぎっしりと札束が詰まっていた。

「はあ!?どうしたんだよその大金!!」

「先日アンタが持って帰った短刀、あっただろう。
アレをギルドへ鑑定に出してみたところね、伝説の秘宝って事が判明したのさ」

「あ…あのチープな短刀がか!?」

「という訳でレオン、あんたがいなくてもうちはやっていけるのさ」

「んなアホみてえな話…信じられっかよ……」

「ま、とにかくだ。ウチらはあんたが居なくたってやってられんだ。
独り立ちしたって幾らでもかまやしないよ!!」

「……わーったよ。そこまで大丈夫と言われちゃ俺も心配しようがねえ。
俺も親父みてえに冒険者として名を上げてやらぁ…」




「……また、村から出てっちゃいましたよ村長」

「フン!!古くからの風習を理解できぬ若者どもが増えて困るわい!!」

「ですが村長、このままやり方を変えぬままでは、いずれ廃村になるのも時間の問題です」

「なんだと…!!」

「もう、厳重に掟で村民を縛るのはやめにしませんか。以前から不満の声も上がってました、
我々ONESのみが掟を免除されるという実態に。今回の魔物の暴走により
その不満はさらに爆発する事でしょう」

「くっ……」

力なく地面にもたれる村長。

(この村はきっと、変わる。
…賀王夜レオン。俺は、これから集落を変えてみせる
掟で追い出す形となってしまったお前でも、帰って来れるような集落に…

だから近い未来…その時が来たら、こんな集落で良ければいつか…きっと……
お前の偉大な両親と、そしてお前自身が育ったこの"故郷"に…)

戻ってきてくれ。

青年が、そう想いを馳せる。
自身を救ってくれた偉大なる冒険者の血を引く男へ。
集落を救い、掟を破ってまで小さな命を助けた男へ。

この集落もまた…。変わっていくのだ。
希望に満ちた方向に、より良き未来へ…。


「オイ……」

「狼牙の…流血。
ああ、そうだ。あの時は…ありがとう。
あなた達がいなかったら、きっともっと被害が出てたよ」

「…俺たちは借りを返しただけだ」

「それよりもよ。アタイは、聞きたかったことがあんだ」

「……なによ?」

「おめえら……なんであの時、アタイらを助けた?」

「あの時って……?」

「馬鹿か、忘れたわけじゃねえだろうが!あのイーグルタイガーに襲われてた時ん事だよ…」





「今まで…メーワクかけて悪かったな」

「どういう風の吹き回しだ?」

素直になれないのやら、悔しいのやら口を閉ざすルーヴ。
代わりに、ロプスが代打で口を挟んだ。

「…俺たちは今回…他所モンを騙そうとした挙句、
その他所モンに助けられちまった。



「ほぅ、お前たちが心を入れ替えるなんてな。夢にも思わなかったぜ」

「チッ…んで、どーなんだよ?
アタイらが冒険者やんの…正式に許してくれんのか?どーなんだよ!!」

「…………わーった。わーったよ、許してやるさ」

「ほ……ほんとかっ!?」

「ああ。ある条件を一つ飲むならな」

「よっしゃあ!!!!んでなんだ、条件って?
魔物の討伐か?護衛依頼か?なんだってやってやんよ!!」

「ほう…ならよ……
その前に、今まで迷惑かけた連中に、謝罪周りに行かねえとなあ!!」

「なっ!?だ、誰がそんなメンドクセー事を!!」

「あぁー!!やっぱお前ら反省してねえなッ!!」

「馬鹿野郎ルーヴ!思っても言うんじゃねえよ!」

「思ってもって…お前もかロプス!!」

「だぁーーッ!!ケジメをつけるってめんどくせえなぁ!!!!」

この後、一週間かけて彼女らは
これまで迷惑かけた他の冒険者やギルド達に贖罪巡りとなるのだが……
ここではその物語は、語らないでおこう。





「準備はできたか?」

所変わり、ある一つの家。
…彼女がかつて育った思い出の場所だった。

「ああ、俺はもう万全だ、いつでも出れる。
……ふっ、ルーヴ。お前少し嬉しいんじゃないか?
晴れてこうして旅が出来るようになる日が来るなんてよ」

「…るせぇっ!さっさとアタイらも名を上げて、あいつらに追いてかれねえようにすんぞ!!」

「アネゴ、…おれも頑張る!」

「あったりめーだ。あの人間達、見てろよ!
アタイらが先に名を挙げて、ギャフンと言わせんだ!!行くぜ!!」

「ああ!」「うぉおおッ!!」

地元で悪名轟かせていた彼女らも、
世界から見ればまだまだかけだし。

故郷との確執も解け、新たな装いと志を胸に
かけだし冒険者は、世界へと旅立っていくのだ。

第三章 かけだし冒険者と獣のオキテ END



リオン11
レオナルド10
レオジ8
レオナ8
レオノスケ7
ラオ6
レオ5