2020年 7月11日 10:35 ネ連にて;
「号外!号外!魔王軍がかねてより確執のあった隣国、フォー国に侵攻!もう首都間近にまで接近したようだー!!!」
「そして、連合側は今回の件について、連合軍を派遣することを決定!戦争だ!戦争が起きるぞー!」
ネ連のニャスクワにて、一人の新聞記者がそう声を上げ、通りを走る
通りゆく人々は次々に足を止め、その記事を買う
「まさか、魔王軍がいきなり侵攻するとはな」
「嫌ねぇ。戦争が始まるなんて」
「だからワシは言ってたんだ!魔王軍など、さっさと攻撃して、滅ぼしてしまえとな!」
その記事を読んだ人々は様々な言葉を口にする
多くは魔王軍に向けられた非難の声だった
そして人々は自らの都市に存在するニャレムリン宮殿に心配した目を向ける
そこでは、今まさにこの話題についての緊急会議が行われようとしていた
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「情報は以上でありますスニャーリン書記長」
「うむ。よろしい、下がってくれ」
「はっ。ではこれで」
軍服姿の人物が部屋から退出する
それと同時にスニャーリン書記長と呼ばれた人物の横に座っていた勲章をたくさんぶら下げた軍服姿の男が立ち上がる
「今聞いた通りだ。NGB(ニャーゲーベー)の諜報員によると、フォー国に魔王軍が侵攻した。日時は一昨日、つまり、7月9日だな。魔王軍は現在、増加した空挺部隊とともに、フォー国の首都の最後の壁『アイアンライン(鉄の線)』に進行中。その侵攻部隊にはどうやら魔法連隊もいるらしく、魔法による攻撃に疎いフォー国が陥落するのは時間の問題だと思われる。また、フォー国が防衛のために建設していた防護壁や防衛施設などが、『アイアンライン』の中にある物以外、全て占拠、掌握された。さらに、これは前に開かれた連合会議でも言われたことだが、敵は要塞と思われる建物を建設中だ。これを見てほしい」
軍服姿の男は自らのそばにあったリモコンを触り、一枚の画像を映し出した
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「この画像の緑の線で囲まれ、赤い×印が書いてあるところが占拠されたフォー国も防衛施設だ。また、青く塗られている範囲が、魔王軍が要塞を建築しようとしているところだ。この画像から見てわかるように、かなり規模がでかい要塞を作るようだ」
ここで一旦区切る
何か質問があるものはいないかを確認するため、その部屋にいる者たちを眺める
誰も何も言わないことがわかると、一つ頷き、そのまま話を進める
「この話はもう、一般市民に伝わっている。市民は安全と一刻も早くの平和を求めている。しかし、敵の奪取、もとい、所持する防衛機能は侮れん。私だったら、この国を攻めろと言われても拒否する。どうしようか。スニャーリン書記長。」
軍服姿の男はそういうと、スニャーリン書記長の方へ顔を向けた
「…これは、政治的に扱いにくい問題だな。ニャクトル・ニャルニャコフ陸軍大将。人民は平和と安全を求めている。だが、それを得るためには軍部に勤める者という尊い犠牲を出さなければならない。そして今回の敵は防衛の戦力では向こうのほうが上だ。フォー国に存在する対魔王軍用の隔壁、各所に散りばめられた軍用の基地・ならびに防衛用の基地、そして、建設し始めた新たな巨大要塞か…全く。ここまでされると人民の平和を勝ち取るためだとはいえ、そう易々と手は出せんな…」
そこまで言うと、ニャクトル大将が声を発しようとする
が、スニャーリン書記長は続ける
「だが、ここからフォー国に一番近いのは我が国である。そして、フォー国は長年ともに歩んできた友でもある。加えて、国連の方から連合軍が派遣されることになったようだな。それはあっているのかね、ニャクトル大将」
「はっ。間違いありません。7月9日に行われた緊急連合会議にて、連合軍の派遣が決まったようです」
その言葉を聞くと、スニャーリン書記長はニヤリと笑った
「ニャクトル大将、連合の連合軍議長殿に『ホットライン』を通じて連絡を取れ。内容はこうだ『我々、ネ連は共に歩んできた友好国であるフォー国が危機に瀕していると言う情報を聞き、いても立ってもいられなくなってしまった。よって急ではあるが、一時的に連合に入れてほしい』とな」
その言葉を聞いたニャクトル大将含む、空・海の将校や高級政府役人たちがどよめいた
スニャーリンは続ける
「全軍の大将、将官に次ぐ。ただいま、この時刻より、第一級戦闘準備令を発令する!さらに、現時刻をもって、書記長特別権限12条の4項目目『近隣の国にて、武装などでの攻撃があった場合、書記長は全軍を束ねる全軍総帥になることが可能である』を適用とし、私、スニャーリンは今から全軍総帥とする!」
そう声高らかに宣言する
会議室の中はシンと鎮まりかえる
ニャクトル大将は口を開こうとした
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瞬間、激しい爆発音がしたと思うと、会議室が揺れ出した
そして階下にて、銃声が鳴り響く
「なんだ!何が起こっている!」
とスニャーリン書記長が声を出した瞬間、ドアを蹴破る勢いで入ってきた兵士が口を開く
「書記長、大変です!ニャレムリン宮殿の正門がいきなり爆破され、そこから武装集団が流れ込んできています!現在防衛部隊が対応しております!」
「なんだと…くそ、こんな時にこざかしいテロリスト共が!」
兵士が叫ぶ
「書記長、将校様、役人様!お逃げください!地下の緊急対策室にご案内します!」
「クソッ!コードレッドを発令しろ!あのテロリストどもを消し去ってしまえ!」
「はっ!了解しました!」
そういうと、案内役の兵士達を残し、何人かが何処かへ去った
そしてスニャーリン達は無事に緊急対策室にまで避難したのだった。
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これはネ連史上、初の政府系施設への攻撃として先、長きにわたって記録されることになる……….
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2020年 7月11日 10:40 グロン連邦にて;
「全く。魔王軍も大きく出た物だなぁ。ミシュールよ」
「そうでございますね。ヘックマン首相殿」
車の中で二人は話す
ここはグロン連邦の一大都市『リョヨン』の市街地である
そこに長い列を作って停まっている車の列が一列
その全ての車が現役首相であるヘックマンを護衛している車列である
「しかし、遅いなぁ。パーティに遅れてしまうよ。もっと早くできないのか?」
ヘックマンが運転手に尋ねる
「申し訳ございません、ヘックマン首相。どうやらこの先にてトラックが横転してしまっており、現在通行止めになっているようです」
「全く。一体全体こんな急いでいる日に横転しなくたっていいものを」
「パーティに遅れないため、下道を使用するのも手なのですが、どういたしましょう…」
「いや、下道はやめておいたほうがいいだろう。今更このような車列を動かすのも骨が折れる。このまま事故の後片付けが済むのを待つ方がいいだろうな」
「かしこまりました、ではそのようにいたしま…」
ドカーン!!
運転手が喋ろうとした瞬間、前列にいた護衛車の一台が爆発する
次いで、二台三台と次々に爆発する
そして連続して銃声がなる
「なにっ!襲撃だ!コードブラックを発令!大統領車両を守れ!」
「ゴー!ゴー!ゴー!ヘックマンが乗っているのはあのデカブツだ!集中して弾を打ち込め!逃すな!」
覆面をかぶった男が周りに怒鳴る
「あのデカブツは普通の弾を通さねぇ!ランチャー持ってこい!」
「チィ!撃たれた…!!クソったれぇ!」
「オラァァ!⚪︎ねぇぇ!」
「差別主義者のヘックマンに天誅を下せ!奴に属する政治家も同罪だ!」
平和な市街地は一変、地獄の戦場と化した
各々が叫びながら銃を撃ち、爆発物を投げ、負傷し、傷つけ合っていた
騒乱編 第二へ続く