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*76話『素材集めの冒険』
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その後、アミィの家へ優也達6人が集まった。
*61話『秘密の会議』

「こちらが今回探す、必要な素材達で〜す」
……町長宅の地下。

そう言ってアミィは壁に貼られた紙にバンと手を当てた。
薄暗い灯りに照らされてる一室には

赤朽葉色の大水晶 ×1 (希望者:咲希)
街に住む大人達が並んでいた。

赤色の魔糸 ×取れるだけ (希望者:アミィ)
青色の魔糸 ×取れるだけ (希望者:アミィ)
緑色の魔糸 ×取れるだけ (希望者:アミィ)
数は約、二十名ほど。彼ら全員、今回の事件の首謀者である町長に加担していたのであった。

溶岩の鉱石 ×取れるだけ(希望者:ダイロ)
絶縁の鉱石 ×取れるだけ(希望者:ダイロ)
抗酸の鉱石 ×取れるだけ(希望者:ダイロ)
「…揃いましたね。それでは始めるとしましょう」

「…ちょっといい?」
町長が取り仕切り、会議が始まる。

「はーい、どうぞ」
「昨日、我々はイエローデザートでのサンプリング中。ラフレッド・アミィ、そして、青村咲希を捕縛する事に成功しました」

「アミィとダイロ、多くないっ!?」
「そして…ホテル・ルージュでオレージ・ダイロと桐谷楓を確保したと聞きましたよ、緋色さん?」

「いやぁめんぼくない。今ある素材じゃどうしても高性能な奴が作れないのよ」
そう町長が視線を向けるのは…あのホテルの受付員。名前は緋色らしい。

「この素材がなけりゃ盾として著しく性能が低い代物になるが、どうする?」
「はい、そうですね。ただ、二人…逃げられてしまいましたが」

「そ、それは困る。じゃあ…頑張って素材、探すか」
「仕方ないでしょう。ですが今回…オランジュさんのタレコミによって…把握している子供達はこれでほぼ全員、確保したと言えますね」

「よーし!そうと決まれば手分けして…」
「おい、逃げた二人はどうなったんだ?大丈夫なのか?」

「この流れデジャヴ…」
そう聞き返したのは、商店街でパン屋をしているおじさん。

「現在逃走を続けているのは松村翠、それと真田優也。…この二人は地下都市に逃げ込んだようです。捕まるのも時間の問題でしょう…」

*77話『束の間の休息』
「はてさて、この計画もいよいよ大詰めと言った所です。ドン・ディスコツィオーネによる、島の色のサンプリングはほぼ終わりを迎えました。地下の魔法陣も既に最終段階まで組み込んでいます。…近いうちに、島全体の色を、この街に集約することができる」

素材が集まり、アミィ達職人は作業に取り掛かる事となる。
「……しかし、本当にやるのだな?」

「これから何日かかるかわかんないんだけどさ。その間お二人でゆっくりデー…島を一緒に回ってきたらどうかな?」
話を聞いていた一人が、不安そうに言う。

アミィの提案に乗り、優也と楓は二人でじっくりカラフルアイランドを巡る事にしたのであった。
「なんでしょう?……ここまで来て、反対するつもりですか?」

「とは言ったものの…大体は素材集めや調査で回っちゃったよな〜」
「い、いやいやいや!そういう事ではなくてだな…。ただ、これで…本当にこの街は、良くなるのか?」


「…………」

「……当然でしょう。ディスコツィオーネの織りなす色は見るものを魅力する。この島全体の色を、この街に集約させれば…この街は世界一色鮮やかな街として君臨できる」

「そうなれば、昔のように活気に溢れた街に戻る。…我々はもう、この計画を実行するしかないのです」

*78話『新たな装備』
「……そ、そうか。やっぱり必要な事なのだな」

*79話『翠の決意』
「当然です」

*80話『新たな大陸へ』
「さて、それでは私は…ディスコツィオーネと作業に取りかかりますよ。皆さんへの指示は…。引き続き、他の住民達に目を光らせておいてください。計画に支障をきたす恐れがある者は…ひっそり捕らえさせていただきますから」

そう言い、町長は地下の奥深くへ入っていく。

そこで街の人たちは…解散をした。

「…………」

「…どこへ行くんですか?」

緋色が、オランジュを呼び止める。

「……お前にゃ関係ないだろう」

「そっちは、地下都市への道じゃないですか。よっぽどの事がない限りは、私達はそっちへ行けないですが?」

「……ダイロと、少し話がしたいだけだ。説得して、どうにか…こちら側にすれば、あいつは解放されるだろう」

「…まだ、そんな馬鹿なことを言ってるんですか。無駄ですよ、一度命令に反いた者は…延々の地下労働ですから」

「ふん、そこまでする必要もないだろう。とにかく俺は行く」

「……はぁ。好きにすればいいですよ。ただ…血迷って、彼らを逃したりでもしようものなら…分かりますよね?」

「無論だ」

そう言い残しオランジュも地下へと消えていく…。

「……あーいうのが、親バカとでも言うんですかね…」

緋色の呆れてつぶやく声は、誰に聴かれることもなく闇に溶けていった。





…薄暗い地下を、優也と翠は進んでいく。
どんどんと迷路のような道のりを、前を歩くディスカラーズを頼りに…。

「……まだ着かないのかな?ここ広すぎるでしょ…」

「…あの緑のディスカラーズさんも街の至る所に入り口があると言ってましたし…街全体を巣食っているのでしょうね…」

「もしそうだったら…流石に街の人たちも気づくよな……」

そうしているうちに…二人は、やっとディスカラーズ達が『補充所』と書かれる部屋へ入っていったのを確認した。

「この部屋の隣に、労働施設…あっ、あれ…かな?」

優也が隣にある扉を指さす。

「……は、入ってみますか…」

「うん。……あれ、この扉…鍵がかかってるみたいだ」

扉を開こうとするが、硬く閉ざされていて開かない。

「……脱走、させないため…でしょうか。やっぱりここが…労働施設…」

「多分そうだね…鍵かぁ、どうしよっか…どこにあるか見当もつかないけど…」

「おい!そこで何をしているのですか!!」

すると突然、背後から声がした。

(…ま、まずい!!ディスカラーズだ)

「アナタ達…囚人ですね?…何故、こんなところにいる?まさかとは思いますが…脱獄ですか?」

(……ん?…どうやら俺たちを追ってきた奴とは違うみたいだな。)

「何を黙りこくっているのですか!!…仕方ありません、捕らえるしかないようですね」

(まずいまずい!!考えてる暇なんか、無い!!)

「ま、待ってください!!…その…さ、先程ここで…え、えっと…労働作業する様に言われたのですが…か、鍵がかかっていて入れないんですよ」

咄嗟に

「…………」

(さ、流石に苦しいか…?)

「……まったく!囚人管理の奴は何をやってるんですか。いいでしょう、今鍵を開けてやりますよ」

「あっ…ありがとうございます」

(やった、上手くいった!!)

(や、やりましたね優也さん)

見事優也はディスカラーズを欺き、二人は労働施設に潜入する事となった。

*62話『囚人達の輪の中』

二人はディスカラーズに開けてもらった労働施設を見渡した。

(…人がいる…!)

(……は、働かされてますね。……人数が多いですが…みんなカラフルシティにいた人たちなのでしょうか…?)

(だとしたら…行方不明で騒ぎになっているはずだけどなぁ…)

(それもそうですね…。この中に、アミィ達はいるんでしょうか…)

(…ここからじゃわからないな。……ねえ翠、アミィ達の事をここにいる囚人達に聞いて回ってみない?)

(えっ…き、聞き込み…ですか。わ、私…ちょっと…その。苦手なんですが…)

(…うん、わかってる。だけど、いち早く見つけて合流しないと…)

「おい、お前たち!さっさと作業に取り掛かりませんか」

いつまでも作業をせず突っ立っている二人に痺れを切らしディスカラーズが割って入ってきた。

「あっ、はい!すぐ取り掛かります!」

(…行こう翠。作業はとりあえず見様見真似でやって、怪しまれないようにね)

と、優也は慌てて返事を返す。優也と翠は作業内容もわからないまま、それぞれ別々の場所へ行った。



(…とは言ったものの、何をしてるんだろうこの人達?)

優也が行った場所では、男女が花や果実を石ですり潰したり混ぜ合わせたりしていた。

(…作ってるのは…絵の具?)

とりあえず空いている机に入り、見様見真似で作業をするフリをする。
…そして、隣で作業している強面の男に話しかけた。

「あの…すみません」

「あん?なんだよ…今話しかけんじゃねえ」

いきなり突っぱねられてしまった。

「いや…その、どうしても聞きたいことがありまして」

「…なら他の奴にしてくれ、話してるところを奴らに見られたら俺まで罰を喰らうんだ。もう話しかけんじゃねえぞ」

「…………」

想像以上に、労働施設での聞き込みは難航しそうだった。



(……こ、この人たち…何か、魔法を詠唱している…?)

一方翠が向かった先では何人かが絵の具に入った瓶に両手を向けて何か魔法を使っていた。

(…な、何もしていないとさっきのディスカラーズさんに怪しまれますね…わ、私も…)

翠も同じようにやってみる。
…しかし、流石に魔法を見様見真似でやるのは無理があったようで
多分、ちゃんと魔法はかかっていないだろう。

(…それよりも…は、話しかけ…なきゃ…うぅ……)

(こ、これも…みんなを助ける、ため…!!)

翠は精一杯の勇気を振り絞り…自分から知らない人に話しかけた。

「ぁぅ…ぁの、す、すみませ…」

「…何かしら?…アングルジャーマ・ロートロッソ!!」

翠が話しかけたお姉さんは…こちらに目を向けず、魔法の詠唱作業をしていた。

「ぅ…その…」

「話しかけるならこっち向かないで。前を向いて話して」

「えっ…」

「話してるとこを見られたら…怒られちゃうの。スリプビエント・グリュンヴェルデ!!…あまり長く話してると気づかれるかもしれないし、一つだけなら聞いてあげる」

「は…はいっ!」

どうやらこの女性は、融通の効く良い人みたいだ。



「それで…何を知りたいのかしら?それとあなた…今初めて目にしたけど、新入りかしら…?」

「…あ、あの…私、友達を探しに来たんです…ここに捕らえられているはずで…」

「…驚いたわね。まさか自分からここへ来たわけ?」

「は、はい。な、仲間がもう一人いまして…うまく、潜入出来たんです」

「…へぇ…臆病そうなのに、やるわね貴方。そこまでしてお友達を助けたいってわけ?」

「……わ、私…今までずっと、怖い事から逃げ続けて、立ち向かった事が無かったんです…
だ、だから…だからこそ、わ、私は…やらなくちゃならないんです!!」

翠は普段表に出さない自分の意思を、初対面であろう女性にさらけ出した。

「…少し、声が大きいわ。バレちゃうから静かに。」

「す、すみません…」

「……ふー、よーくわかったわ貴方の決意は。…それで、探し人の特徴は?」

「…えっと…魔女の姿をした藍色の服の女の子と…派手なマゼンタ色の服を着た、髪飾りのたくさんつけた女の子です」

「結構特徴的ね。そんな子達、見てたら印象に残ってるはずだけど…生憎私は覚えがないわ」

「……そうですか…」

「…代わりと言ってはなんだけどいい事を教えてあげる。」

「牢屋はね、ABCの三つに大きく分けられているの。そして、それぞれ作業時間が別々に分けられているわけ。
今の時間帯はわたしのいるBの囚人が働かされているのよ」

「……そ、それでは…私の友達は」

「ええ、あなたの友達は私の目の届かないAかCの牢屋にいる可能性が高いわ」
 
「ろ、牢屋の場所は…教えてくれますか?」

「…いいわ、教えてあげる。Aはこの部屋の出入り口を出てずっと右に進むとある。そしてその付近には階段がいくつかある。
そこから一つ降りればB、二つ降りればCの牢屋があるわね。」

「な、なるほど…ありがとう…ございます…!!」

「…他に、私に聞きたいことはあるかしら」

「えっ…でも、一つだけってさっき…」

「僅かばかりだけど…あなたに、可能性を見出したわ。そのオロオロした態度とは裏腹に、貴方の覚悟が伝わってきたってワケ」

「それで…聞きたいことがあるならさっさと言いなさいな。後しばらくは監視がここに見に来ることはないだろうし」

「…ありがとうございます…」

それから翠はこの地下で捕まっている人達のこと、敵のこと、やらされてる作業の意味を教えてもらった。

捕まった人達は皆、ディスカラーズや彼らと繋がる人達の動きに気づいてしまった者たち。
そして大勢の街の大人達が裏で線を引いている事。
…極めつけに、認識障害の魔法によって、街から消えた人たちは…
最初から居なかったかのように住民達は惑わされている事だった。

この事実には翠も狼狽えた。

そして今やらされている作業は…魔法の絵の具を作ること。
この絵の具は…ディスカラーズの武器であるペイント弾などに使われるそうだ。

一通り話が終わった後…翠は、優也とこの情報を共有する為に、ここから移動することにした。

「あ…ありがとうございました!あの、二人を助けたら…必ず、ここにいる方達も助けに戻ります…!」

「…ええ。…期待して、待ってるわ」

*63話『獄中の二人達』

「……優也さん!」

翠は優也のいる場所へとやって来た。

「…翠?どうしたのさ一体」

「あの…私。色々と情報を聞くことができました…!」

「なんだって…!凄いな翠!!…俺の方は、あんまり大した情報聞きだせなくてさ…」

そう言う優也の後ろに目をやるとすごく、無愛想そうな人達が沢山並んでいた。

「…そ、そうですか…そちらはまた、ずいぶんと大変だったんですね…」

「……ま、俺の方はどうでもいいさ。それより何を聞いてきたの?」

「あの、ここで話してると…看守に話してる所が見つかってしまいます。こっそり、抜け出して…誰の目にも付かない場所で話しませんか」

「…あぁ。わかったよ!」

二人はディスカラーズ達の目を盗み、作業部屋の外へ出た。

「…内鍵だから閉まってたけど簡単に開いたな。よく、誰も逃げ出さないなこれ…」

二人は周りに誰もいないことを確認すると、翠は先程の女性から聞いた事を優也に話した。

「……そ、そんな…事が…」

優也も、街の隠された事実に動揺を隠せずいる。

「…あの。それで、ですね…アミィ達がいるのはAかCの牢屋なんです。さっき話した通りAはこの階層でCは二つ下の階だそうで…」

「うーん…それだったらね、多分Cだと思う」

「そ、それは…なぜですか?」

「…アミィと咲希に似た姿をした子が下の階から昇っていたのを、牢屋から確認した人がいたんだ」

「今あそこにいた人達ってBのグループの人達なんでしょ?その下の階層から来たんだから、Cだよきっと」

「…そ、それって結構有益な情報じゃないですか!」

「……いや、翠がうまく聞き出せていなかったらこの情報も大したことなかったよ」

「そ、そうでしょうか…?」

「うん。とにかく、これで大体の居場所は絞れたと思う。早速行こうよ!」

「…はいっ!」

二人は、牢屋の方へ向かう。途中で見回りのディスカラーズをやり過ごしながら…
二つ階段を降り、Cの牢屋へと辿り着いた。

「……ここだね…ここに…多分、二人がいる」

「早く、探しましょう!」

「…それにしてもすごいな。こんなに人がいるなんて」

「これだけ消えていたのにもかかわらず、町では何事もないようにみんな過ごしていたんですね…」

しばらく歩いてみたが、二人の姿は見当たらない。優也は囚人たちに聞いてみることにした。

「あの、すみません。藍色の服とマゼンタ色の服を着た女の子を知りませんか?」

「何だあんたら、脱走したのかい?無駄な事を…。…その特徴に似た子なら、一番奥にいる。……全く、子供なのに捕まっちまうなんて可哀想なことだ…」

「…一番奥、ですね。ありがとうございます」

そして10分ほど、牢屋を進んでいき…二人はとうとう、行き止まりまでたどり着いた。
そこには広めの牢屋があったが、灯りが少なく捕まっている人が見えない。

「……ここにいるのでしょうか」

「…暗いな。姿が見えないや…」

「そ、その声は…翠?」

「…アミィ!!やっぱり、ここにいたんだね!!」

「二人ともよくここがわかったね…」

「…ねえ、咲希もそこにいるの?」

「……いるよ」

「よかった…!無事みたいで…ほんとによかった」

「…あれ、楓ちゃんとダイロはどうしたの?」

「……実は……」


優也はアミィ達が居なくなってからのことを話した。


「……嘘、そんな事になってたなんて…」

「二人共捕まっちゃって、もしかしたらアミィ達と同じ場所にいるかもしれないと思ってたけど…」

「…残念だけどここにはいないよ。…くううぅ町長めぇ…楓達も捕まえるなんて、許さないんだから…!」

「…?なぁ、町長ってどう言うことだ?」

「えっ?こんなところまで潜入してるのに、黒幕のこと知らないの?」

「黒幕?…そう言えば、あの時黒幕の名前を言いかけてたけど…ま、まさか黒幕って…」

「町長よ!!町長がドン・ディスコツィオーネを全部裏で操っていたのよ!!」

「……えええええぇぇぇ!?」

「……そんな…」

信じたくない事実に、翠は膝から崩れ落ちる。

「なんで!なんで町長がこんな事を…!?」

「……それもこれも全て。私達は直接聞かされたわ…」



…一方その頃。


ダイロは地下奥の牢屋で目を覚ました。…入れられた牢屋は、Bの牢屋。
当然先程捕まったばかりなので、労働作業はしておらず優也たちとは会っていない。

「……うーん…」

「…はっ!こ、ここは…どこだ!?」

「…おい、楓!しっかりしろっ!」

隣で眠っている楓を起こすダイロ。

「うぅ…ん……ダ、ダイロ…?私たち…」

「……捕まっちまったみたいだな。クソッタレッ…何にも出来なかった…!」

「師匠は無事なのかっ…!!」

「…俺がどうかしたか?」

そこへ現れるはダイロの師匠、オランジュ。

「ッ…!!師匠ッ!!無事だったんですね!!」

「……無事?」

「はいッ!ディスカラーズ達に鍛冶屋を襲撃されて、俺たちの情報を敵に吐かされてしまったのでしょう?」

「……ふー、そうか…。……なぁ、ダイロ。仮にそうだったとしたら、なんで俺は五体満足で牢屋の外に突っ立っていると思う?」

「え?……どういう事ですか。敵の拘束からこっそりうまく抜け出せた、とか…じゃないですか?」

「まず俺は敵に痛ぶられても仲間の事は吐かん。……そして」

「この地下牢から簡単に抜け出す事など…出来んのだ」

「え?じゃ、じゃあ…どうしてそこにいるんですか師匠!」

「…お、オランジュさん…あなた…まさか…!?」

「そこの小娘は流石に気づいたようだな。ダイロ、流石にここまでくれば…わかるんじゃないか?」

「え?なんで……。!!い、いやっ…そんな、まさか!!」

「俺は…奴らの仲間だ」

「う、嘘だ!!師匠は信念を持って鍛治の仕事をしている!悪い奴に加担するわけねーだろ!!」

「お、お前ディスカラーズか!?なんか魔法を使って変装してんだろ、捕まった俺達を嘲笑う為に!!やめろよ!!」

「…ダイロ。お前が七歳の頃、だったか。俺に弟子入りをして来たな。何度も断ったのに毎日毎日しつこく…」

「な、んで…それを…お前が…」

「……いい加減認めろ。俺はオランジュだ」

「ぐっ……。ぐわぁぁああああッ!!」

ショックのあまり、ダイロは大きく咆哮を上げ、倒れた。



それからたった数十秒。ダイロは早くも現実を受け入れようと、重い体を起こす。

「だ、大丈夫…ダイロ!?」

「…あ、ああ…。これが夢なら、とっとと覚めて欲しいが…現実を受け入れるしか無さそうだな…」

「…ふん、意外と早く立ち直ったみたいだな」

「…そんな事よりアンタ、見損ったぞ!!…今まで、ずっと尊敬してきたのに!!」

「そうなる気持ちもわかるが、それよりもだ。なんで俺があのディスカラーズ共に手を貸しているか…知りたくはないか?」

「…そ、それは……知りたいさ!でも…今は、アンタの顔も声も見たく…」

「強情な奴だ。なあ小娘…お前も気になるだろう?」

「え?…そりゃ、気になるに決まってるじゃないの!!今までダイロを騙して来た理由!!」

「…騙した覚えはない。……それも、これも…この街のためだ」

「………街のため?」

…町長がこんな事をする理由。そしてそれに町の人たちが加担している理由。
それらの理由は今。アミィ、そしてオランジュの口から語られようとしていた。

*64話『語られる真実』

…今から数年前。まだ子供だった町長、色野一郎は
家の地下室で遊んでいたところで、ある入り口を見つける。

そこを通るとなんと、かなり広い地下空間が広がっていたのだった。
…そして、そこにいたのはお腹をすかしたドン・ディスコツィオーネ。
ディスコツィオーネは色を吸える力を持っていた為、その昔人々に恐れられ
地下の奥底へと追いやられていたのだ。
しかし、彼はそんなことを気にせず食べ物を分け与え、お互いに仲良くなっていった。

数年後。青年となった一郎の、唯一の肉親であった母親が病気で帰らぬ人となる。
彼女の遺言は…カラフルシティを世界一の街にしてほしい…と言うことだった。

そして彼は町長を若くして継ぐ事となる。
しかし街は活気が無くなっていく一方だった。
年々島から人が出ていき、華やかさもなくなり…
貿易先もどんどん無くなっていき、島はある種の
危機を迎えていたのだった。

「あぁ…なにが、なにがいけなかったんだ…!」

町長は途方に暮れる。どうすれば、街は昔のように活気を取り戻すのかを。

…必死に方法を探した。そんなある日、彼は実家にあった街の歴史書を発見する。
この街は…昔は世界一色鮮やかな街として名を轟かしたこと。
それにより、今でこそ殆ど無くなってしまったが
多くの貿易先との取引が行われるようになったのだ。

…それが今は、どうだろう。時代が進むにつれ…カラフルシティよりも
華やかな街はたくさんできた。色鮮やかさも世界一を名乗れるのか
疑問に思う程度に、街は色褪せてきていた。

「もう一度だ。……もう一度、世界一の称号を手に入れれば…。この街は立ち直るはずです!!」

「しかし…一体どうすれば街を色鮮やかにできる?……町中を染色する…?いや、そんな事をするお金は残って無いし…」

そこで思い出した。適任の者がいると。

「……なあ、ディスコツィオーネ。この木の色を吸って…家の壁に塗り替えられるか?」

「……オ安イ御用」

ディスコツィオーネは、木の色を吸い取り壁に塗りたくる。
壁は、緑と茶色のグラデーションに染まった。

「…は、はは。こんな簡単なことだったんだ。…これだ。…これで!街をもっともっと…この街を!!!!色鮮やかにしてやりますよォぉおオ!!!!!!!!!!」

それから町長はまずカラフルシティの外れにある小さな廃村から色を吸い取った。…今ではその町は、『色の消えた町』として語られている。

「…ダメだ。こんなものじゃたりません。…ならばいっそ。この島全体から、カラフルシティへ……」

彼の行動は次第にエスカレートしていき、次第に島全体をも巻き込もうとまで発展していった。

しかし、当然そんなことをしようものなら反対するものも出てくる。だから町長は言葉巧みに街の大人たちを説得し、仲間に引き入れようとした。

「…というわけなので…このまま我々が何もしなければ…我々の愛するこの街は、完全に終わりです」

「…おいおい、冗談だろ…?そこまでこの街が追い込まれてるわけ…」

「冗談で私が、このようなことを言うはずがないでしょう。…お願いします。…どうか、この私に協力してください…!」

町長がこの話をした相手は…みんな、この街が大好きな人達。大切な故郷を失いたくない人達。
皆、関わり方は違うけど確かにこの街を愛している人達に協力を要請した。
…こんな事を聞かされた彼らは、絶対に協力せざるを得ないという…確信が町長にはあった。

こうしてまんまと彼らは町長の言う事を信じ、彼に協力してしていく事となる。
そして、実験としてまず近くの平原の色を吸い取ったのだが…

「な、なんだぁ!?ここら一体の色がすっぽり抜けちまったぞ!!」

…通りすがりの一般市民に見られてしまった。
姿を見られてしまったので止むを得ず理由を話すと…

「…へっ?し、島の色を!?そんな事やめてくださいよ町長!!」

町長の計画に反抗する男。このまま街へ帰せば、この話も町中へ
広まってしまう。…そこで町長は、この男を捕まえ監禁した。
これが始まりだった。

町長は街の地下に牢屋を拵え、秘密を知ってしまったもの、反逆をするものを
片っ端から捕らえていった。さらに怪しまれぬよう
ディスカラーズの魔法の絵の具を用いて、人々の記憶からいなくなった人たちの
記憶を消すという暴挙にも出た。

「…おい、町長。やりすぎなんじゃねえか」

「彼らは事が全て済んだら解放しますよ。兎に角今は人手も欲しい時期です。頑張って働いてもらいますよ」

町長はある大きな計画を思いついていた。

…とある、魔導書に書いていた。
魔力を、多く持つ魔物のみが展開することのできる巨大な巨大な魔法陣。
それを使えば広範囲に魔法をかける事ができる。
…更に、範囲内にいる人の記憶も改変することができる。
そこには禁術の一つと、確かに書かれていた。

この二つの力を使い、町長は島全体の色をカラフルシティに集約させ
街の人達からは前からその状態だったと思わせるように
記憶を書き換えてしまう…。それが、彼の計画だった。

「ですから…ほんの少しだけの辛抱ですよ。捕まってもすぐに解放される。安心してくださいよ」

…イエローデザートでアミィと対峙した町長は、これらの説明をした後に最後にそう告げた。

「ほんの少しの辛抱ですって…!?それで、許されるとでも思ってるんですか!?」

「……何を言おうと私のすることは変わらない。これが最善そして最高の策。この街の、生き残る術。子供には分かりませんでしょうねぇ」

「…違う!!そんな事しなくてもっ…街を何とかできるはずよ!!」

「黙りなさいッ!さあそろそろ捕まってもらいますかね…!」

(……そうだわ、通信結晶でみんなにこっそり連絡を取れば…この状況が伝えられる!)

……そして話は、53話へと繋がる…。

*65話『野望を止めろ!』
「……以上がアタシたちが聞いた話。…この地下に、巨大な魔法陣がある。
それが発動しちゃったら、最後。この島全体の色が全部取られちゃうわ」

「どうやれば…止められるのかな?」

「…基本的に魔法陣を作った者を倒すか…魔法陣を直接叩くしか無い。とにかくもう時間がない…。
……今頼れるのは二人しかいない。…お願い。町長を止めて…」

「さ、咲希…」

…ここまで必死な咲希を初めて見た二人は思わず息を呑んだ。…そして、優也は大きく返事を返す。

「……わかった!!止めてみせるよ!魔法陣の発動を!!」

「で、でも私達だけで、できるのでしょうか…」

「今から急いで行けば、間に合うかもしれない。とにかく、たった二人でディスコツィオーネを倒すのは難しいと思う…。
だから、魔法陣を見つけて壊すしかないよ!!」

「アミィ!魔法陣の場所、知ってる!?」

「……うーん…どうかなぁ…。だいぶ前に、行かせたんだけど…」

「…行かせた?」

「お待たせしましたーっ!!!!」

「来たッ!!ナイスタイミング!!って、翠さん!?そして…あら、貴方は…?」

優也と面識のないパタフリルは首を傾げた。

「うわわっ!なんだ!?ディスカラーズの仲間!?」

「ちょっとストップ!身構えなくて良いの!彼女は私の従えてる精霊よ。味方!今までこっそり
魔法陣の場所を探らせてたのよ。精霊は自由に呼び出せるから、牢屋からでも指示が出せたの。」

「アミィ…せ、精霊なんて連れてたんだ…」

「あ、どうも。パタフリルって言いますっ!あの、ご主人様、この方は…」

「さっき言ってた優也!とにかく詳しい話は後よ!!それで、場所はわかったの?」

「ええ。ばっちしです!!あ、それとついでに牢屋の鍵の場所もわかったので看守のいない隙に取りに行けますが…」

「…今はいいわ!とにかく、この二人を魔法陣の場所まで案内してあげて!!お願い!」

「…はい、がってんしょうちです!!」

「よし…さあ、行こう!もう時間は少ない!」

「…はい!」

優也と翠は、アミィの使い魔であるパタフリルに魔法陣の場所を案内してもらう事となった。
…果たして、町長が魔法を起動させる前に止めることができるのであろうか…?



…場面は再び、ダイロ達の牢屋へ移る。

「…何もしなければ、この街は廃れて消える。俺たちは、それを止めたいだけなんだ」

「……だったら…こんな、こんな手荒な真似しなくたって…!」

「そうさ!!なんで街のみんなに相談しなかった!?他に方法もあった筈だろ!!」

「…………それは、この俺も…少しそう思ったさ」

「…!だったら何で協力なんか…」

「……それでもこの街を絶対に俺は失いたくない。街の連中に相談したところで、簡単に解決する筈も無いだろう」

「だからーッ!なんで大人はそう簡単に限界を決めつけちゃうのよッ!!みんなで協力してみないとわからないじゃないの!!!」

「その軽率な博打が失敗すれば、行き場を失う者は大勢いるのだ」

「…では、そろそろ…判断の時、だ」

「は、…判断?」

「今、ここで決めろ。町長の計画に賛同し俺たちに着くか…反対ししばらく牢屋で過ごすか…」

「反対した場合…それでも数日経てばお前らは解放されるだろう。ただし…カラフルアイランドは『カラフルシティ以外は全て色が無い』という記憶に書き換えられ、ここでの会話も全部忘れる事になる。」

「…どっちをえらんでも…島から色が消えるじゃねえか…こんなの、選択肢の意味がねぇ…!」

「そうだ。どうあがいても、もう決まった事だ。さあ、選べ…俺らの仲間になるか無駄な抵抗をし記憶を消されるかをな」

「……勿論、お断りだ!!」

ダイロはオランジュに向かって大声でそう宣言した。

「…………そうか…とても残念だ。ならばお前達の記憶はここで消える。…気づいたら何事もなかったかのように、お前達はカラフルシティで過ごしている事になるだろう」

「…いいや…そうはならないさ。絶対な!」

「…どこからくるんだ、お前のその自信は…?」

「確かに俺たちは今…捕まって何もできないかもしれない。だが…まだ、2人がいる!!」

「はっ、あの坊主と小娘か?捕まるのは時間の問題だろう。わからんなダイロ。今までずっと一緒にいたが…
こんな目に見えた結果も分からぬ男だったか、貴様?」

「…うるせえ!あいつらならな…きっと、何とかしてくれる!翠と…優也ならな!!」

「……そうよ。優也なら最後まで諦めないわ。例えどんな逆境でも…!」

「……ふん、ならば、せいぜいそこで祈っているがいい」

そう言い残し、オランジュは牢屋を後にした。



…地下を駆け回る、妖精と二人の子供達。裏道を抜け、階段を降り、見張りをやり過ごし。
彼らは魔法陣の場所へ着実に向かって行っていた。

「…なるほど、ダイロと楓さんは捕まってしまったのですね」

移動中に優也はアミィ達を探している途中で起きた出来事をパタフリルに話した。

「その二人も…無事だといいんだけど。えっと…パタフリルって言ったっけ。君はその二人見なかった?」

「いえ、私が探索した中ではダイロさん達は見つからなかったですね…」

「……そっか」

「…!少し先に、ディスカラーズ達がいます。隠れてください!!」

パタフリルの言った通りに優也と翠は物陰に隠れてやり過ごす。

「……それにしても、敵がいるかどうかよくわかるね。」

「はい。私、こう見えて探知能力を持ってますので」

「探知能力?」

「範囲はあまり広くないですが少し先にいる敵の気配とかがわかるんですよ。誰かどうかも何となくわかるんです」

「そんな便利な力を持ってるんだ」

「……そうこう話しているうちに、つきましたよ。この階段を降りた先にある扉の向こうが魔法陣のある部屋です」

そう言いながら三人は階段を深く降りていく。地の底の底、一番地下。そこで立ちはだかっていたのは重厚で巨大な扉。
とても頑丈でびくともしなさそうなその扉は、まるで誰もこの部屋に入れぬよう作られている様に見えた。
そして見える10個の鍵穴。

「…あの…鍵はあるの?」

「さっき通気口から何とかこの部屋に侵入して、内側から全部開けておいたので大丈夫です!」

「……げ、厳重なのかザルなのかわかんないな…」

「流石に奴らも小さな通気口から出入りできる者がいるなんて思ってないのでしょう。さぁ、早く行きましょう!」

そして重い扉を開くと……

「…これが魔法陣。初めて見るけど…多分、規格外のデカさなんだろうな。」

……そこに広がるはとても、とても巨大な空間。向こう側の壁すら見えないその空間はおそらく…街はおろか、島の大部分を占めているかもしれない。
そんな場所にある、部屋とほぼ同等の大きさの魔法陣。…世界規模で見ても、中々お目にかかれないものがそこにはあった。

「それで、この魔法陣を…壊すんだよね?」

「はい!!話によると3分の1程壊さない限り自動で修復されるそうです。この大きさだと時間がかかりそうですが…頑張りましょう!!」

「…わかった!!翠は何か、攻撃魔法とかある?」

「あっ…はい。初級魔法とかは一応使えます」

「じゃあ翠は魔法で壊していって欲しい。行くぞ!!はぁああ!!」

ドガァーーーン!!!!

「うわぁああっ!?」

魔法陣に向かい剣を振りかぶった優也だったが、突如背後から聞こえる騒音でその動きは止められる。

「っな、なんですか!?」

「…………貴方達。やって、くれましたねぇ…」

「あ、貴方は…!!」

「……はぁ、どうやってここまで来たんですかね?」

そこにはドン・ディスコツィオーネの肩に乗った町長が、こちらを冷たく見下ろしていた。

*66話『対面』

「……アミィ達から、話は聞きましたよ町長」

「ほう…どうりで。逃走中の貴方達がここまでかぎつけて来られたわけですね。しかし鍵は?」

「そんなの、私が通気口から入って開けちゃいましたよ!!」

そう言って町長の前に姿を表す小さな精霊。

「……これは、珍しい。精霊なんて滅多に姿を表さない筈ですが…これは誤算でしたね。実に滑稽だ」

「…町長!!今からでも遅くないと思います。計画を止めてください…!」

「あっはっはっはっは…!!今更止めて何になりますか!この街の現状も、彼女らから聞いたのでしょう?」

「…はい。まさかこの街がそんな状況に陥ってるなんて、知りませんでした。…それでも、間違って…」

「水掛け論はやめにしましょうか。もう、何度もそのようなやり取りはしてきたのですよ。
…話し合いが無駄なら…単純な話です。戦いで決着をつけましょうか。あなた方が勝てばこの計画は諦める。我々が勝てば…わかりますね」

「た、戦うんですか。…町長と」

「ええ。嫌なら構いませんよ?見ていてください、島全体が灰色になっていく様をね」

「……町長、貴方は見ず知らずの俺と楓に優しく街を案内してくれた。お金が無くて泊まる場所がない俺らに、アミィのお店も紹介してくれました」

「…正直、俺は戦いたくないです。…だって、街を紹介しているあなたは本当に楽しそうだった!!…町長も本当は、こんな事したくないんじゃないですか…!!」

「黙りなさいッ!!…はぁ、話し合いは無駄と言ったはずです。もうハッキリわかりましたよ。どうやら貴方はまだ、私の危険性を理解できていないようですね…!!ディスコツィオーネ!!」

「ハッ」

町長の掛け声に、ドン・ディスコツィオーネが構える。

「……死なない程度に、やってしまいなさい!!」

「…御意。グリーンペイント!!」

「うわぁっと!!」

広範囲に放たれる緑色の絵の具を優也達は横に飛んで避ける。

「あ、危ない。あれに触れたら、眠っちゃうんだよな…!」

「休んでる暇など与えん。ペイントガン!!」

間髪入れずに、避けた隙を突いて攻撃を仕掛けてきた。

「ッ…サヴェンマ!!」

翠が結界魔法を展開する。

「あぁ、危なかった…ありがとう翠」

「わ、私はこれくらいしか、援護出来ませんが…頑張ります」

「よーし、私も張り切っちゃいますよ。パラライズッ!!」

パタフリルが近づき、麻痺魔法を放つ。

「…こんなもの、効かん!!」

…がしかし、効いていない。

「わわっ…!」

慌てて踵を返すパタフリル。だがディスコツィオーネは、その隙を見逃さない。

「眠ってろ」

「!!」

緑の絵の具がパタフリルに当たる。

「うーん…むにゃむにゃ…」

「まず一人…」

「あぁっパタフリル!!!」

「…くそッ。あの絵の具に触れたら一発アウト…迂闊に近づけない!!」

「さぁ、どうしますか?大人しく降伏してくれると楽なんですがねえ」

「…だ、誰が降伏なんか…」

「はぁっ!!」

「!!」

受け答えをする際の隙を突き、ペイントガンを放つディスコツィオーネ。
…しかし、優也に絵の具が届くことはなかった。

「はぁっ、危なかった…!」

「な、なんだとっ…貴様、今どうやって防いだ?」

間一髪のところで翠が結界を張ってくれたのだった。

「……そんなの、私も分かりませんよ。ただ私は人の殺気を感じることができるんです。だからこうして早く動けた。それだけですっ」

「ふう、ありがとう翠。…翠がここまでしてくれてるんだ、俺が足手纏いになってたまるか…!」

そう言うと優也はアイスを唱える。足元に飛び散るペイントはみるみるうちに凍っていく。

「…なにか、策でもあるのか?まあそんな物溶かしてしまえばいい。」

赤い絵の具が放たれた。火属性の力を持つ絵の具は氷の魔法を打ち消す。

「…策なんてそうそう一瞬で浮かばない。とりあえず、行動に移しただけだ」

「それはなんともつまらんな。さっさと、負けてしまえ」

「そうは…行かないんだよ。アイス!!」

今度はディスコツィオーネ本体に向けてアイスを放つ優也。…だが当然。

「レッドペイント。…ふん、そんな物が効かないと分からぬのか?」

「ならこいつはどうだ?…サンダー!!」

「なっ…!」

今度は噴射されている赤絵の具へサンダーを放った。電撃は絵の具を伝い、放っている本体へ流れる。

「ぐわっ…!」

硬直するディスコツィオーネ。電撃で蒸発した絵の具からは煙が出て周りを包んでいる。

「や、やりました。攻撃がやっと通りましたよ!!」

「…………ふん、効かぬ、な」

しかし、全く効いていないといった表情で彼はこちらをみて笑っていた。

「っ…!」

「そんな生ぬるい魔法で我を倒せると思わない方がいい」

「……そうかよ。アイス!!」

今度はこっちが不意をついて放ったアイス。しかし当然赤い絵の具で打ち消された。

「芸がない男め。どうせまた、性懲りも無くサンダーを使う気なのだろう!」

「…大当たりだッ!!」

サンダーを放つ優也。それを避けようともせず余裕の顔で受けているディスコツィオーネ。

「はぁっ!!」

…煙に紛れたその隙に、そのまま優也は剣で思い切り斬りつけた。

「ぐはぁ…!!」

「よしっ…攻撃が、通った!!」

「このッ…はぁあああああ!!!」

激昂したディスコツィオーネが優也目掛けて多量の絵の具を放つ。

「うわっととととと!!」

小さな盾で絵の具をいなす優也。しかし優也が絵の具に触れてしまうのは時間の問題だ。

「優也さんっ!!早く、こっちに!!」

優也を手招きする翠は、結界を張る準備をしていた。

「助かる!!」

流れ込むように翠の背後に飛び込む。それと同時に再び、結界が張られた。

「くそッ!!……あの娘、厄介だ。」

「ふぅ…さて、こっからどうしようか…!!」

二人の子供達と怪人の戦いは続く。

*67話『今この時のために』

「もう、手加減も油断もせん。主人の計画の枷となるもの達よ。吹き飛ぶが良い」

「カラフルスプラッシュ…!!」

ディスコツィオーネから発せられるは七色の絵の具たち。
その絵の具が、混じり合い黒色に染まっていく。

「な、なんだかヤバそう…!」

……しかし、中々放たれることはない。チャージに時間がかかっているのだ。

「これは…またとないチャンスだ!!攻撃をたたみかけるなら、今だな!!」

「アイスッ!!」

「アース!!」

「サンダー!!」

二人は一緒になり、ディスコツィオーネに一心不乱に魔法を撃ち続ける。
…しかし、魔法は打ち消されているように見えた。

「クックック…今の我に魔法は意味を成さん。なにせ7つの属性の力を持つ絵の具を操っているのだからな…!!」

「くそっ…あまり近づきたくないがそれなら」

優也は懐に入り込み、斬撃を繰り返した。

「はぁっ!!てやぁ!!そらっ!!」

「ぐ……。はああっ!!」

「うわっ…!!」

「優也さんっ大丈夫ですか!!」

ディスコツィオーネから放たれる気迫で優也は壁に打ち付けられる。

「…今の我には何人たりとも近づけん。……よし、溜まったようだ。覚悟はいいか?くらうが良い。カラフルスプラッシュ…!!」

一点に集中した色が混じり合った黒い絵の具が、ディスコツィオーネから放たれる。

「翠ッ!!」

「はい!!サヴェン…

「無駄だ!!」

黒い絵の具は翠の結界を打ち破った。

「そんなっ!?きゃあっ」

「っ、危ない!!」

翠を庇い、攻撃を受ける優也。

「うっうぅっ…」

「はぁ…はぁ…圧倒的火力の前に…半端な結界は、意味をなさない。…まぁ残念ながら、狙ったのはそこの娘の方だったのだがな…」

「優也さんっ!!優也さんっ!!うぅ…ひどい怪我…!!」

「うっ…ぐっ…。み、翠。怪我は、無い?」

「何言ってるんですか!!どうみたって、優也さんのが」

「他人の心配をしている暇はないぞ。さぁ眠ってしまえ。グリーンペイント…」

「……っ、サヴェンマぁ!!」

翠は半泣きになりながらも魔法で絵の具を防いだ。

「ククク…そいつを守って何の意味がある?さあ…その結界がいつまで持つか」

「くぅっ…!」

(くそっ…くそっ!!身体が…身体が、動かない!!こんな時に…!!)

優也は打ち震える身を起こそうと必死に悶えた。だが、動かない。さっきのダメージがでかすぎたのだ。

「……うぅ…っ!!」

魔力が切れそうになり朦朧としながらも翠は結界を張り続けた。

「チッ…小賢しい。ならばもう一度…今度こそ、吹き飛ばしてやる…」

「さぁ…これで、終わりだ…カラフルスプラッシュ…!!」

「…………」

ほぼほぼ限界を迎えていた翠は結界をすでに解いていた。その目は、恐怖に怯えている。

(逃げたい、逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい)

絶対的守りのはずだった結界魔法を破壊する一撃。それが目の前で溜まっていく恐怖に翠は逃げ出したいと心から願っていた。

「み…どり…」

「…!!」

「……にげ、てくれ」

優也の声でハッとする翠。

(……私、今…また逃げようとしていた…。怖いことから…嫌なことから目を背けようと…!)

みるみるうちにパワーが溜まっていくディスコツィオーネ。翠は必死に考えた。

(私…私…ここで逃げたら…もう、一生…。……駄目!!それじゃあお母さんに…みんなに、顔向けできないよ。だったら…でも、どうする)

(…………ハッ!!そうだ…私にはまだ、出来る事がある…)

「フハハハハ…どうした、諦めたか?…諦めたのならここで許してやるが」

その声を聞き優也は考えた。

(…くそ。正直…もう、動けない。み、翠に…これ以上…痛い思いも、させたくない………仕方ない…!!みんな、ごめん…)

「……っ……ぁあ…わかった。諦め…
「駄目です!!!!」

翠の為に敗北宣言しようとする優也を、翠が止めた。

「!?み…どり…?」

「……きっと、今まで私が決めてこなかった理由は…。今、この時のため、だったんです」

「…なにを…」

「……ジョブ、チェンジ。……"魔法使い"!!」

翠の周りを眩い光が取り巻く…!

「……わずかながら…身体の奥底から魔力が、湧き出てくるのを…感じます!!」

「血迷ったか小娘!?…素直に負けを認めれば痛い目に合わずに済んだものを!!」

「もう私、逃げるのは嫌です!!このまま、逃げる道を選ぶくらいなら…ここで貴方の攻撃を真っ向から喰らって、死にます!!」

「翠…ば、ばか…何を言って…」

「…大丈夫です。死ぬ気は、さらさらありません…!」

「……ふん、なら吹き飛べ今度こそ。さらばだ、カラフルスプラッシュ…!!」

(……大丈夫、なはず…。読んだ本によれば…魔法使いのジョブは…魔法が、強化される…!!)

次の瞬間、先程よりも大きな黒い絵の具の光線が二人に向かって放たれた。

「サヴェンマ」

そして翠が結界魔法を放つ!!

「はぁああああ!!!!」

「吹き飛べぇええええ!!!!」

二人の視界は、黒い絵の具で見えなくなっていった。





「はぁ…はぁ…や、やりまし…た…!!」

「な…そんな…馬鹿なッ…!!」

黒い絵の具が晴れそこには…翠のバリア。
ディスコツィオーネの渾身の一撃は、魔法使いの翠の結界により、完璧に防がれていた…。

*68話『剣に願いを』

「ぜぇっ…ぜぇっ…」

必殺技を二回も使ったディスコツィオーネは流石に疲弊していた。

「なにをしてるんですかディスコツィオーネよ!!早くこの二人を…捕らえなさい!!」

「わかって、いる…!」

ディスコツィオーネは杖からピンク色の絵の具を作り出した。

「…ふう、流石に…回復せねば」

(…あれはまさか、回復の絵の具…!?)

翠はなんとかアレを手に入れられないか考えた。
アレを優也にかければ…怪我を治すことが出来るかも、しれないと。

「……アイス、です!!」

翠はピンクの絵の具にアイスをかける。





*69話『』

*70話『足掻き』

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